大判例

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東京高等裁判所 昭和61年(け)12号 決定

被告人 渡邉経男

〔抄 録〕

そこで一件記録に基づき検討するに、本件恐喝未遂被告事件につき、被告人は昭和六一年三月二六日東京地方裁判所において懲役一年二月の有罪判決を受け、同年四月七日東京高等裁判所に控訴申立をしたこと、被告人は同月三〇日私選弁護人を選任する旨の弁護人選任回答書を同裁判所に提出していること、同裁判所第五刑事部は同年六月九日までに控訴趣意書を提出すべき旨の通知書を同年五月九日被告人に送達したこと、同月二〇日被告人・弁護人連署の弁護人選任届(同月七日付のもの)が同第五刑事部に提出されたこと、したがって、右二〇日から趣意書提出最終日まで十分の時間的余裕があったとみられること、しかるに同年六月九日の最終日までに被告人及び弁護人のいずれからも控訴趣意書の提出はなかったことがそれぞれ認められる。

ところで、一般に控訴審において被告人等から選任された弁護人は、通常、まず控訴趣意書提出の有無を確かめ、それが未提出等のためこれを提出する必要がある場合には当然被告人ないし裁判所と連絡する等適当な方法で趣意書提出期間を確認しその期間内に趣意書を提出し、もし何らかの事情で右期間内に趣意書を提出し難いときは予め趣意書提出期間の延長を求める措置に出ることが要請されているといわなければならない。したがって、一たん裁判所から趣意書提出最終日が被告人あて通知された後私選弁護人が選任された場合において、裁判所としてはあらためて弁護人に対し右最終日を通知する必要はないと解され、それは必要的弁護事件であると否とにかかわりないものと考えられる。

しかるに、本件においては前叙のような経過をたどったものであるから、これによれば、弁護人としては漫然趣意書提出期間を徒過したものとみるほかなく、もとより刑訴規則二三八条にいうような「やむを得ない事情」が存する場合とは認められないので、東京高等裁判所第五刑事部が弁護人選任届を受理した後さらに弁護人に対し控訴趣意書提出最終日の通知をなすことなくその提出期間経過を理由として控訴棄却の決定をなしたことは、所論にもかかわらず何ら違法とすべきものではない。

(萩原 小林 奥田)

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